タグ:Summicron 50/2 ( 123 ) タグの人気記事

縄抜け

 (略)、逆柱(さかばしら)などという迷信があって、新築の家が、どこからどこまで、申し分なく出来あがると、かえって、「魔がさす」から、一本だけは、わざと柱を逆(さかさ)に立てて置く、というのです。


― 里見弴「文章の話」より ―
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第2回プラチナブロガーコンテスト



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by solalyn | 2018-03-14 18:50 | WORDS | Comments(0)

浮浪雲

 「あのさー、たくちゃん。『アメリカは』とかひとつにまとめて言うなよ。おまえ、アメリカ人全員知ってるわけじゃねえだろ」

二十年前、そう言って若造だった俺をたしなめてくれた同級生のシンジも、いまは行方知れずだ。
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第2回プラチナブロガーコンテスト



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by solalyn | 2018-02-20 20:09 | PROPOS | Comments(0)

新年のご挨拶

 翌朝、八時過ぎに目を覚ましたとき、自分が新しい人間になっていることに天吾は気づいた。目覚めは心地よく、腕や脚の筋肉はしなやかで、健全な刺激を待ち受けていた。肉体の疲れは残っていない。子供の頃、学期の始めに新しい教科書を開いたときのような、そんな気分だった。内容はまだ理解できないのだが、そこには新たな知識の先触れがある。

― 村上春樹「1Q84」より ―

 あけましておめでとうございます。一休宗純ではないですが、今年も用心しいしい、このドラゴンワールドの探索を続けたいと思います。お互いどうぞよい旅を。
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by solalyn | 2018-01-05 01:43 | WORDS | Comments(0)

アオハルの話

 三週間ほど前のことだ。

高3の息子を助手席に乗せて、近所のブックオフに向かっていた。しばらく走っていると息子が、「バンプオブチキンの新しい曲かけてもいい?」と聞いてきたのでいいよと答えた。彼のiPhoneからその曲が流れだしたとき、ああ、こりゃ聞いたことがあるな、と思ったので、「これってさ、『アオハルかよ』の曲?」と尋ねると、そうだよと返事が返ってきた。しばらく二人で黙って聞きながら走った。ふと柄にもなく感慨めいたものが湧いてきたので、それがつい口をついて出た。

「坊っちゃんはいま、というか、これからがアオハルなんだもんなあ。俺のアオハルはオカ君が死んで終わったなあ。まあ40近くまでだから、それでもずいぶんと長い方だったと思うけどね」

その日は雲が多い日だった。時々晴れ間があるかな、というような日。そのまましばらく走っていると視界の左側で息子がしきりに右腕で顔を拭っているのが見えた。泣いていた。ぼくに気取られないように、声を殺して。

だからぼくもまったく気づかないふりをして、いつも通りチンポコやらウンチョスやらの話をした。そうしてふたりでゲラゲラ笑った。
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by solalyn | 2017-11-10 15:42 | PROPOS | Comments(0)

ぜんぶ

 先日、仕事の撮影の合間に、見知らぬ街を稼がないほうのカメラを持ってほっつき歩いていたときの話。

ちょうど丘の上から駅前の喫茶店に向かって道を下っているときに、女の子たちの話声が聞こえてきた。キャーキャー言っている。中学生ぐらいかな。ちょうど下校の時間か。だんだん声が近づいてきた。

「はい!1、○○君、2、○△(呼び捨て)、3、○□先輩。さてどれでしょう!」

間髪入れずに他の子が口々に○○君だの○□先輩だのと答える。

「ブーッ。ちがいますっ」

少女たちがほんのひとときしかとどまることができない、あの時期特有の輝かしい笑い声をはじけさせる中で、問いを発した少女は高らかに宣言した。

「正解は、全部でした!」
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by solalyn | 2017-06-03 00:38 | Comments(0)

うつってしまうものたち

 最近、「距離1.5~2メートルでのスナップショット」がマイブームである。

上がりを見て、いまだに驚きやよろこびを感じる。つくづくスナップショットはおもしろいなと思う。極々まれに、人生の謎が、ふっと、映り込む。
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by solalyn | 2017-05-24 01:48 | PROPOS | Comments(0)

遠い太鼓

 父と母。

上がってきた写真を見ながら、あとどれくらいの間、こんな写真が撮れるんだろうかと考えた。
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by solalyn | 2017-04-14 01:15 | PROPOS | Comments(0)

テクテク パチパチ

 先日、十五年来の写真の盟友とふた月ぶりに(いつもの、あの懐かしい三十代の日々に、われらが根城だった)サイゼリヤで話をした。そのときの彼の言葉。

「たくちゃん、写真はね、眼の延長でも手の延長でもありませんよ。足の延長なんですよ。足がぼくのまわりの景色をスクロールさせていってくれるんですよ。そうやって流れていく景色を、ぼくはただ撮るだけでいいんですよ」
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by solalyn | 2017-02-27 01:53 | PROPOS | Comments(0)

どこにもないところ

 島尾敏雄の小説『死の棘』のもとになった言葉が記されているという、聖書の「コリント人への第一の手紙」について検索していたはずが、いつの間にか横道に逸れていた。その横道に落ちていた言葉。

「ユートピア」という単語は、ギリシア語の”Ou(無い)”と”Topos(場所)”を、あるろくでなしのイギリス人がかけ合わせたものだという。

あ、「ろくでなしの」というのは、単なる個人的な直感で、根拠はありません。ではでは。
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by solalyn | 2017-02-05 23:14 | PROPOS | Comments(0)

女学生は死なず

 父方の大叔母であるクニヨは、「薩摩生まれのお転婆女学生が、そのまま年をとった」という女である。ころころとした容貌に相応しく、陽気でよく笑い、にぎやかなことがだいすきだった。

数年ぶりに会った彼女は、骨と皮だけにやせ細っていて、病室に入ったときには本人かどうかわからないほどだった。

でも、ベッドに近寄って目を見るとすぐにわかった。ああ、そうだ。この目だ。いたずらっぽく、きらきらしている目。

その日、孫やひ孫に囲まれた彼女は

「まあ、こんなに若い男に囲まれてしあわせだこと」

と言った。そういいながらも、しばらくするときっぱりこう言ったのだ。

「あなたたちはこんなところにいてはだめ。外で遊んでらっしゃい」

その台詞は、ぼくもちいさい頃彼女からよくいわれたものだった。

帰り際にぼくは、「クニヨ、遺影を撮るからポーズして」とせがんだ。彼女はちょっと笑い、親指がするするとあがってきて


カチ 
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by solalyn | 2017-02-01 03:07 | PROPOS | Comments(0)