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幸福な光景

三年程むかし、撮影前にふらりと入った名古屋の喫茶店での出来事。

そこは郊外の地方都市によくある典型的なお店だった。木造平屋建てで、夜はカラオケスナックに変身するような、ありきたりな、安っぽいお店。

店内には、二人連れの若い男の子たちがいるだけだった。たぶん表に止めてあった二台の大型オートバイの持ち主達だろう。

右手の奥にはカウンターがあって、ちょっと昔のアイドルに似た顔立ちのママさんがいた。ママさんに一番近い-つまり一番奥の-テーブル席では小学校低学年くらいの男の子が食事をしていた。

僕は中程の、奥が見通せるテーブルに座って、アイスティーを注文した。

名古屋の喫茶店特有の、飲み物にやたら付いてくる、柿の種やら、せんべい、ゼリー(!)なんかをほおばりながら、ぼんやりテレビを見ていた。どうやら切ない話をやっているようだった。


「おいしい?」

ママさんが男の子に尋ねた。彼は最初聞こえない振りをしたんだけれど、もう一度聞かれて、

「うん、おいしい」

と、照れくさそうに、小声でそう言った。

「そう」

ママさんが本当にうれしそうな、静かな、優しい顔をした。


写真は撮れなかった。泣かないようにするので、精一杯だったから。
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DATA:Leica M6 Jupiter-12 35/2.8 Kodak BW400CN f5.6 1/125
# by solalyn | 2009-12-07 21:46 | PROPOS | Comments(2)

夢十夜

こんな夢を見た。

冬の夕暮れ時に、私は西に向かって歩いている。前方にも幾人か黒っぽい人影が歩いている。皆、西に向かって急いでいるようである。私は何故皆が西に向かって急いでいるのか尋ねたくなったので、小走りに前を行く人影に追いつく。

「これはぜんたい何処へ向かっているんでしょうか」

くぐもった声で、影が返事を寄越す。

「何処でもないでしょう。皆行きたい方へ歩いているのですから」

「でも、皆が西に向かうってのも随分妙な気がします」

「そうですか。そういうこともあるのではないですか。では失敬」

影は急いで遠ざかっていく。冬の西日が、刺すように近づく。
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DATA:LeicaM6 M-Rokkor 28/2.8 Kodak BW400CN f8 1/250
# by solalyn | 2009-12-03 20:53 | PROPOS | Comments(0)

アシタ

明日。目の前に迫っているようにいつも感じているのに、永遠にそれを生きることができない日。

古代ギリシア人は過去から未来へ、人は後ろ歩きして進んでいると考えていたそうです。なぜなら、過去は見えていながら遠ざかり、未来は見えないままにやってくるから。

ではでは。
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DATA Leica M6 Canon 50/1.4(f/S-mount) Kodak BW400CN f8 1/125
# by solalyn | 2009-12-01 20:48 | PROPOS | Comments(0)

すくい とる

言葉にならない

ことどもを

そっと

すばやく

手の中の機械ですくいとる

私は金魚すくいだ

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DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak BW400CN f2.8 1/60
# by solalyn | 2009-11-29 20:41 | PROPOS | Comments(0)

ジダイオクレ

こんばんは。みなさんお元気でしょうか。ぼくはまあまあです。

さて、世はデヂタル時代だそうで、どこへ行ってもデヂタル。犬も歩けばデヂタルに当たる。そんな感じで氾濫してます。

ぼくの愛する写真もデヂタルデヂタルの大合唱で、いささか食傷気味です。

いや、いいんです。みんなが便利なら。喜ぶなら。デヂタルのがいい写真が撮れて、しあわせになれるなら。

でも、ぼくはデヂタルだけじゃあ、しあわせになれません。

デヂタル『が』イヤなんじゃあありません。仕事では使ってます。便利です。

ただね

デヂタル『だけになるのが』イヤなんです。なんかこう、押しつけられてる感が濃厚で。大政翼賛会的で。ファッショ的で。


ま、ぐだぐだ言わずに撮り続けますよ。

「イケバワカルサ」

ではでは(^o^)/
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DATA:Leica M6 Canon 50/1.4 Kodak KL f4 1/60
# by solalyn | 2009-11-26 21:53 | PROPOS | Comments(2)

タカマガハラ

今夜は名古屋の友人の話を。


友人に誘われての伊勢旅行からの帰路にて。見たこともない雲の峰を見た。

「たくちゃんにこういうのをみせたかったんだよ」

二人でこりゃあなんだか縁起がいいや、と笑いあった。


その日のお昼に伊勢神宮で、ぼくにしてはめずらしく賽銭を投げてお祈りをした。ぼくにしてはめずらしく友人のために祈った。こころから祈った。


友人に誘われての伊勢旅行からの帰路にて。見たこともない雲の峰を見た。

「たくちゃんにこういうのをみせたかったんだよ」

二人でこりゃあなんだか縁起がいいや、と笑いあった。


電気グルーブの『虹』が流れている。ぼくは助手席で涙を流している。

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DATA:Pentaconsix TL Biometar 80/2.8 Fuji PN400N f8 1/1000
# by solalyn | 2009-11-23 23:18 | PROPOS | Comments(2)

ともだち

高校の頃に、「水くせえんだよお前は。友達だろうがよ」と言ってくれた。あれから19年かぁ。

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DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak BW400CN f2.8 1/60
# by solalyn | 2009-11-22 23:42 | PROPOS | Comments(2)

カルティエさんからの手紙

科学技術が鳴らす警笛の破壊的な音につつまれ、

グローバリゼーションという新たな奴隷制度と貪欲な権力争いに侵略され、

収益優先の重圧の下に崩壊する世界であっても、

友情と愛情は存在する。


―Henri Cartier-Bresson―

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DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak BW400CN f2.8 1/60
# by solalyn | 2009-11-19 23:20 | WORDS | Comments(2)

現(うつつ)十夜

こんな現を見た。

仕事帰りの地下鉄で、私の座席に隣り合わせた少女がなにやら一心不乱にノートに絵を描いていた。少し浮世離れした雰囲気の少女だったので、好奇心からノートを一瞥した所、二枚の絵というか、素描が描かれていた。

一枚目は、長い手が涙を掴もうとしているような絵だった。
二枚目は、その涙のような、雨滴のようなものが降っているだけだった。
彼女は、ページをめくって三枚目にとりかかろうとしていた。私は続きを見たいと思いながら、ついうとうとと眠り込んでしまった。

私が起きたのは、降りる寸前だった。少女はまだ描き続けていた。私はまたさりげなく覗き込んだ。
三枚目は死神の絵だった。雨滴と思えたものは、死神の目と鼻になっていた。死神は、悲しいような、困ったような表情に見えた。

私は降りる前に乗降口から彼女を見た。彼女も私を見ていた。不思議な表情をしていた。



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DATA:Leitz minolta CL M-Rokkor QF 40/2 Kodak BW400CN f2 1/30
# by solalyn | 2009-11-18 22:32 | PROPOS | Comments(0)

モノクローム讃歌

一枚の紙切れから、忘れかけていた風景が現れる。


忘れかけていた匂い

忘れかけていたぬくもり

風のそよぎ

嬌声

あなたの声。


モノクロ写真って素晴らしいなあと、心から思う。

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DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak BW400CN f2 1/15
# by solalyn | 2009-11-17 01:59 | PROPOS | Comments(0)