(略)若者が活力をもつためには、社会から馴致(じゅんち)されるな、ということである。古いことばでは、
「不羈(ふき。羈は手綱)」
という。手綱で制御されないという意味である。
ただし、この場合のむずかしさは、自分で自分の倫理を手製でつくらねばならないことである。しかも堅牢に、整然とである。でなければ、社会に負かされ、葬られる。
人間は大思想や社会によって馴致されて人間になるといいながら、じつは、古来、真に社会に活力を与え、前進させてきたのは、このような馴致されざるひとびとだった。
― 司馬遼太郎 『風塵抄 二』 所収 「飼いならし」 より ―
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