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Motorcycle makes a man

オートバイに乗るよろこびは、とても個人的でしかもぜいたくなものだと、ぼくは思う。

ある程度の排気量になってくると、実用的な価値などゼロに近くなる。あのすさまじい機械にまたがって風を切りつつ、右に左にリーンしながら走っていく快感にもし実用的な価値があるとするなら、それはライダーひとりひとりの心の内側での出来事に限定されてくるように、ぼくは感じる。

たとえばぼくは、日本という国の地理や気候が一体になってかもしだす季節感の中を、なんの目的もなくひとりで走るのがいちばん好きだ。

こんなふうに走るとき、ぼくの気持は、とても高揚している。このうれしい、熱い気持ちは、伝えようと思ってもなかなか人には伝わらないようだ。

しかし、自己満足とも、すこしちがっている。オートバイが偉大な先生で、ぼくはその弟子。弟子が先生といっしょになって、やるべきことをやり、学ぶべきことをひとつずつ学んでいくプロセス。これが、オートバイの楽しさだと、ぼくは考えている。オートバイは、ぼくにとっては、先生なのだ。いい先生にめぐりあえて、よかった。オートバイは人間が考えだして工場で大量生産した機械なのだが、よくできたオートバイの、その機械じかけのずっと奥のほうに、なにかとても偉大なものがじっとひそんでいるような気がしてならない。


-片岡義男 「オートバイはぼくの先生」(『アップル・サイダーと彼女』所収)より-


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DATA:Leica M6 Jupiter-12 35/2.8 Kodak BW400CN f8 1/1000
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by solalyn | 2010-09-11 00:54 | WORDS | Comments(6)
Commented by kentilford at 2010-09-11 13:45 x
私は30歳を過ぎてから、念願の2輪中型・大型の免許をとりました。
学生時代、両親に教習所に行かせてくれと頼めなかったので
働き出してから妻に無理を言って通わせてもらい、250ccのオフ車まで買ってもらいました。
今思い出してもとても楽しかった思い出です。息子も後ろに乗せられたし。
でも訳あってもうバイクはありません。そのかわりLEICAが手元にあります。
転ばないし、ガソリン食わないけど・・・
Commented by solalyn at 2010-09-14 00:18
kentilfordさん江

そうなんですね。それはきっと息子さんにとっても素敵な思い出なんでしょうね。

バイクのあとからやってきたライカは、きっと大きい存在になっているんでしょうね。いろいろなご事情があったんでしょうけれども、いまだに両方にしがみついているぼくには、そのいさぎよさがすこしまぶしいです。
Commented by 謎のライダー at 2010-09-14 23:13 x
久しぶりのコメす!

バイクて個人個人で考え方や乗り方はが違うと思いますが
素晴らしい乗り物だと思ってます
バイクに出会えて本当に善かったなと思います

おかげで
三台のバイクに囲まれているせいかなかなか結婚する気になれませんがね(笑)
Commented by solalyn at 2010-09-15 11:16
ライダーさん江

いつもありがとうございます。

本当にそうですよね。ぼくもオートバイに出会えてよかった。そのおかげでこうやってライダーさんとも気持ちを通じ合えるんですから。

いつかツーリングご一緒させてくださいね。それからお仕事、おめでとうございます。幸運を。
Commented by めろんぱん at 2010-10-03 12:53 x
バイクにも疎い僕です(笑)
ふと、あるアーティストの
「500馬力は人間以上の温もり」
と言う歌詞を思い出しました
Commented by solalyn at 2010-10-03 23:07
めろんぱんさん江

やっぱり期待通りにw

ほほう。その歌気になります。
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