<< ぼくのバディ 夢十夜 >>

幸福な光景

三年程むかし、撮影前にふらりと入った名古屋の喫茶店での出来事。

そこは郊外の地方都市によくある典型的なお店だった。木造平屋建てで、夜はカラオケスナックに変身するような、ありきたりな、安っぽいお店。

店内には、二人連れの若い男の子たちがいるだけだった。たぶん表に止めてあった二台の大型オートバイの持ち主達だろう。

右手の奥にはカウンターがあって、ちょっと昔のアイドルに似た顔立ちのママさんがいた。ママさんに一番近い-つまり一番奥の-テーブル席では小学校低学年くらいの男の子が食事をしていた。

僕は中程の、奥が見通せるテーブルに座って、アイスティーを注文した。

名古屋の喫茶店特有の、飲み物にやたら付いてくる、柿の種やら、せんべい、ゼリー(!)なんかをほおばりながら、ぼんやりテレビを見ていた。どうやら切ない話をやっているようだった。


「おいしい?」

ママさんが男の子に尋ねた。彼は最初聞こえない振りをしたんだけれど、もう一度聞かれて、

「うん、おいしい」

と、照れくさそうに、小声でそう言った。

「そう」

ママさんが本当にうれしそうな、静かな、優しい顔をした。


写真は撮れなかった。泣かないようにするので、精一杯だったから。
c0226955_21434045.jpg


DATA:Leica M6 Jupiter-12 35/2.8 Kodak BW400CN f5.6 1/125
[PR]
by solalyn | 2009-12-07 21:46 | PROPOS | Comments(2)
Commented by musik_hibi at 2009-12-08 21:56
人間は愛情の大きさを、リアルタイムで知ることは難しい気がします。
彼が大きくなったときに、気付いてくれるといいなあ。
もしかしたらわかってますかねえ?^^)
Commented by solalyn at 2009-12-08 23:04
そうですね。ほとんどが後からじゃないと気付きませんもんね。

うんうん、気付いてくれたらいいですよね。っていうか、わかってるのかもですね。深いところで^^
<< ぼくのバディ 夢十夜 >>