タグ:村上春樹 ( 7 ) タグの人気記事

遠い太鼓

 父と母。

上がってきた写真を見ながら、あとどれくらいの間、こんな写真が撮れるんだろうかと考えた。
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DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f8 1/1000
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by solalyn | 2017-04-14 01:15 | PROPOS | Comments(0)

浸潤

「俺は思うんだけど、その中でもいちばん不思議なのは、なんといってもおじさん自身だ。そう、ナカタさんだよ。なぜおじさんが不思議かってえとだね、おじさんは俺という人間を変えちまったからだ。うん。このたった10日のあいだに、俺は自分がすごく変わっちまったみたいな気がするんだ。なんていうのかね、いろんな景色の見え方がずいぶん違ってきたみたいだ。これまでなんということもなくへろっと見てきたものが、違う見え方がするんだよ。それまでちっとも面白いと思わなかった音楽が、なんていうのかね、ずしっと心に沁みるんだ。で、そういう気持ちを誰か、同じようなことがわかるやつと話せたらいいなとか思っちまうんだ。そういうのはさ、これまでの俺にはなかったことだ。それでだね、どうしてそんなことになったかというとだね、それは俺っちがずっとナカタさんのそばにいたからなんだ。そしてナカタさんの目を通してものを見るようになったからなんだな。(略)」


― 村上春樹 『海辺のカフカ』 より ―
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DATA:Leitz minolta CL M-Rokkor QF 40/2 Kentmere 400 f5.6 1/250
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by solalyn | 2014-05-02 20:06 | WORDS | Comments(2)

トーン

誰かに話を聞いてそれを文章にする時にいちばん大事なことは、その話のトーンを再現することである。そのトーンさえつかめていれば、その話は本当の話になる。事実はいくぶん違っているかもしれないが、本当の話になる。事実の違いがその本当さを高めることさえある。逆に世の中には、事実は全部あっていても全然本当じゃない話もある。そういう話はだいたい退屈であり、ある場合には危険でもある。


― 村上春樹 『TVピープル』 所収 「我らの時代のフォークロア―高度資本主義前史」 より ―
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DATA:Leitz minolta CL M-Rokkor QF 40/2 Kodak TX400 f2 1/15
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by solalyn | 2014-04-18 23:48 | WORDS | Comments(2)

Burn out

情報が咀嚼に先行し、感覚が認識に先行し、批評が創造に先行している。(中略)これはまったくのところ文化的焼き畑農業である。みんなで寄ってたかってひとつの畑を焼き尽くすと次の畑に行く。あとにはしばらくは草も生えない。本来なら豊かで自然な創造的才能を持っているはずの創作者が、時間をかけてゆっくりと自分の創作システムの足元を掘り下げていかなくてはならないはずの人間が、焼かれずに生き残るということだけを念頭に置いて、あるいはただ単に傍目によく映ることだけを考えて活動し生きていかなくてはならない。これを文化的消耗と言わずしていったい何と言えばいいのか。


― 村上春樹 『やがて哀しき外国語』 所収 「大学村スノビズムの興亡」 より ―
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DATA:Leitz minolta CL M-Rokkor QF 40/2 Kodak TX400 f8 1/1000
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by solalyn | 2014-04-15 23:33 | WORDS | Comments(2)

ゾーン

灰田の脳内にはおそらく、彼の思考スピードに合わせてこしらえられた高速サーキットのようなものがあり、彼は時々そこで本来のギアを使った走行を一定時間こなさなくてはならないのだろう。そうしないと‐つくるの凡庸なスピードにつきあってローギア走行を続けていると‐彼の思考システムは加熱し、微妙な狂いを見せ始めるのかもしれない。そんな印象があった。しばらくすると灰田はそのサーキットから降りて、何ごともなかったように穏やかな笑みを浮かべ、つくるのいる場所に戻ってきた。そして速度を緩め、またつくるの思考のペースに合わせてくれた。


‐ 村上春樹 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』 より ‐
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DATA:Yashicaflex C Yashikor 80/3.5 Fuji PN400N f11 1/300
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by solalyn | 2013-07-03 22:20 | WORDS | Comments(0)

1984年のハルキ

文章というのは「さあ書こう」と思ってなかなか書けるものではない。まず「何を書くか」という内容が必要だし、「どんな風に書くか」というスタイルが必要である。

でも若いうちから、自分にふさわしい内容やスタイルが発見できるかというと、これは天才でもないかぎりむずかしい。だからどこかから既成の内容やスタイルを借りてきて、適当にしのいでいくことになる。

既成のものというのは他人にも受け入れられやすいから、器用な人だとまわりから「お、うまいね」なんてけっこう言われたりする。本人もその気になる。もっとほめられようと思う―という風にして駄目になった人を僕は何人も見てきた。たしかに文章というのは量を書けば上手くなる。でも自分の中にきちんとした方向感覚がない限り、上手さの大半は「器用さ」で終わってしまう。

それではそんな方向感覚はどうすれば身につくか?これはもう、文章云々をべつにしてとにかく生きるということしかない。

どんな風に書くかというのは、どんな風に生きるかというのとだいたい同じだ。どんな風に女の子を口説くかとか、どんな風に喧嘩するかとか、寿司屋に行って何を食べるかとか、そういうことです。


‐村上春樹 『村上朝日堂』 より‐
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DATA:Leitz minolta CL M-Rokkor-QF 40/2 Kentmere 400 f2.8 1/15
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by solalyn | 2013-06-13 01:08 | WORDS | Comments(0)

Zadar

わたしはしばしば思うのだが、我々が自分たちのために選んだ世界の裏側には、もうひとつべつの、選ばれなかった、説明のつかない世界が存在し、それが我々を選ぶことになる。それは偶然の世界であり、出会いがしらの世界であり、そこでは願いがかなえられることになる。ただそれはきわめて希にしか我々の前に姿を現さないし、姿を現したときには、否応なしに我々をまるごと呑み込んでしまう。

― 『ザダール』 マーク・ストランド 村上春樹 訳 「犬の人生」より ―
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DATA:Leitz minolta CL M-Rokkor QF 40/2 Kodak BW400CN f2.8 1/60
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by solalyn | 2011-01-27 15:48 | WORDS | Comments(2)