エニシの話

 最近、近所の人がおもしろい。特定の誰か、というわけではなくて、すごく狭いエリアなのにその中に世界がまるごとあるような感じというか。

加藤清正の股肱の臣は、彼が少年の頃、悪童仲間だったものたちだったという。今までは、

(そんな近所にいるものかね)

などと思っていたが、案外そういうことはあるものかもしれないなぁ、と思い始めている。
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# by solalyn | 2015-12-03 19:50 | PROPOS | Comments(0)

またあした

 友人のカメラマンから聞いた話。


俺、十代の後半から何年間か、ギター持って旅人やってたんですけど。

そんでそうやって日本中ふらふら旅して回って数年経ったころに、ある街に着いたんすよ。米軍基地のある街で、米兵も来るようなバーがあったんで、そこのドアの前に立ったんす。

そしたらね、中から、すげーたくさんのひとの話し声とか笑い声が聞こえて、それがすっげえあったかくて。

だから俺、ドア開けて入ったんすよ。

そしたら、誰もいなくて。奥のカウンターにマスターが一人でいて。

俺、おっかしいなぁって思いながらまごまごしてたら、そのマスターが、

「兄さん、流しかい?一曲弾いてくれよ」

って。だから俺、弾いて。そんで、それ終わってお礼言って出てこうとしたらマスター、

「またあした来なよ。明日はうちでクリスマスパーティーやるから」

って。

俺、それまでいろんな街で、いろんなひとにやさしくしてもらってきてたんすけど、「またあした来なよ」って、はじめて言われたんすよ。そんですげーうれしくて、次の日行ったら、ほんとに大賑わいで。前日にドアの前で感じた話し声とか笑い声がほんとになってて。

そんで、俺、その街で暮らすようになったんす。
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# by solalyn | 2015-11-30 21:31 | PROPOS | Comments(0)

グレートジャーニー

 よくさー、「最近のお笑いはひな壇芸人に頼ってばかりだ。低俗だ」ってゆーじゃん?

でもさ、たぶんきっとさ、そういうのって、「シャボン玉ホリデー」とか、「全員集合」とか「ひょうきん族」とかの頃だっていわれてたわけでさ。

もっというなら、たぶん、陸に上がろうとしてた頃の肺魚とか、アフリカを出ようとする類人猿とか、渡来したての頃の仏教とか、運慶の仏像とか、安土城とか歌舞伎とかもそう言われてたんだろうな、ってね。

・・・え、なにが言いたいのか、って?

「酔っ払うと気持ちいいね」ってこと。
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# by solalyn | 2015-11-25 23:50 | PROPOS | Comments(0)

あたらしいどきゅめんとのおはなし

 今日の撮影は、ゆうべまでお腹の調子が Garry Winogrand だったことがウソのように快調でした。よかったよかった。
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DATA:Leitz minolta CL M-Rokkor QF 40/2 Kodak Tri-X 400 f5.6 1/125
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# by solalyn | 2015-11-13 20:06 | PROPOS | Comments(0)

Il Magnifico

 先日、息子とお風呂に入る機会があった。そのときに気づいたことがあった。

ぼくよりちんこがでかくなっていた。
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DATA:Leitz minolta CL M-Rokkor QF 40/2 Kodak Tri-X 400 f8 1/1000
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# by solalyn | 2015-11-09 17:55 | PROPOS | Comments(0)

写真には写らない

 先日、地下鉄の車内を、どぶねずみが疾走しているのを見た。

黒い鏃(やじり)のような影が、床すれすれを弓から放たれた矢のようにすっ飛んでいく。悲鳴を上げて脚をばたつかせる女性客。にやにやするおじさん。歓声を上げる若者たち。

おまえはさ、すごいね。そんなちっさな体でさ、街中そりゃあ大騒ぎさ。アビキョーカンのルツボってえやつだ。

そんなことを思っていると、遠ざかっていった悲鳴のウェーブが、引き波のように帰ってくる気配がした。

ははあ、こりゃあまた来るな。そう思って、ライツミノルタの距離を2メートルにセットして待つ。やがて悲鳴がどんどん大きくなって


カチ
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DATA:Leitz minolta CL M-Rokkor QF 40/2 Kodak Tri-X 400 f2.8 1/30

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# by solalyn | 2015-11-04 01:47 | PROPOS | Comments(4)

いついつ出やる

 過日、ブックオフの百均文庫コーナーで、司馬遼太郎の地味目な三冊を発見したので、どれか一冊にしようとパラパラと手繰ったときに、次の文章が目に飛び込んできた。


「間違っていた?」

「はい」

「なにをだ」

「殿様を一生里のそばに引きとめておこうと思いましたこと。殿様は、やはり、青い雲のうえで舞う鷹でございますね」

「妙なことをいう」

「籠のなかに入れて飼う鳥ではございませぬ」

「おれが、鷹というわけかね。それは、お里の目すじちがいだ。鷹ならば、籠のなかでねむっていても、天へのあこがれがあるだろう。いずれは籠の目を掻き、くちばしで食いやぶってでも天へ飛びたつ。おれには、天がない。男のこころざしという、天がない」

「ちがいます。殿様が申される天とは、土佐二十二万石の大名に、もう一度おなりあそばすということでございますか。それならば、殿様は、きっと気重でございましょう。旅へ出て、いちど来た道を、もう一度ひきかえすようなものでございますから。殿様は、そんなことにお志を燃やせないのにちがいございません」

「お里は、二十二万石はおろか、この盛親に天下でもねらえというのか」

「いいえ。男の天とは、そのように、目で見、耳できけるものではございますまい。二十二万石や百万石という、文字で書けるようなものではなく、男が、ご自分のもってうまれたお才能(うつわ)を、天にむかって試してみることではございませぬか」


― 司馬遼太郎 『戦雲の雲』 より ―
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DATA:Contax G2 G-Planar 35/2.8 Kodak Tri-X 400 f5.6 1/125
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# by solalyn | 2015-10-21 01:58 | WORDS | Comments(4)

あなたがわたしにくれたもの

最近、近所のバーのマスターから聞いた話。


自分が小学校高学年の頃、妹と親戚のおじさんの家に遊びに行ったんですよ。そんでおじさんのベッドルームでふざけてたら、ベッドの下から女のひとの裸の本が出てきたんで、自分はまだ思春期じゃなかったんですけど、なんか本能的に、

(あ、これはそっとしておかなきゃいかんことだ)

と思ったんですけど、まだちっさかった妹は、自分が止める間もなくおじさんに「これなーにおじちゃん!」って聞いちゃったんですよ。そしたらおじさん、だいぶ困ったんでしょうね。こういったんですよ。

「それはね、おじさんの、だいっじな、下敷き」


でも、今にして思えば、あれ、宮沢りえの『サンタフェ』だったんですよね。表紙硬かったし。
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# by solalyn | 2015-10-09 11:55 | PROPOS | Comments(0)

裏切り者の名を受けて

 ユリアヌスについて深くも考えていなかった頃の私は、この若き皇帝を、アナクロニズムの代表のように見ていたのである。彼が行い、行なおうとしていたことは時代錯誤であり、時代の流れに逆らうことしか考えなかった、思慮の浅い人物だろうと思い込んでいたのだった。

(中略)

ユリアヌスは、このような時代に、一石を投じたのである。もしも彼の治世が十九ヶ月ではなくて十九年であったとしたら、なおも十九年生きたとしても五十歳で死ぬことになるので充分に可能性はあったのだが、もしもそうであったとすれば彼が投じつつあった石も数を増していたであろうし、十九年の間にそれは、流れを変えるまでになっていたかもしれないのである。もしもそうであったとすれば、キリスト教徒であることが現世でも利益になるとは、ローマ人も考えなくなったかもしれない。そして宗教は、現世の利益とは無関係の、個々人の魂を救済するためにのみ存在するもの、にもどっていたのではないだろうか。

― 塩野七生 『ローマ人の物語 XIV キリストの勝利』 より ―
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# by solalyn | 2015-10-06 16:48 | WORDS | Comments(2)

失われたキヨジを求めて

こんばんは。

ウェブ向けではない、非キャッチーな写真の時間です。

どうですか、この大時代な地味さ。すごいですねー大辻さんにお見せしたかったですねえ。

それではまた。
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DATA:Leica M6 Jupiter-12 35/2.8 Kodak Tri-X 400 f5.6 1/125
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# by solalyn | 2015-09-17 18:19 | PROPOS | Comments(0)