"If you build it, he will come."

 いつも古くさいフィルムカメラをぶら下げているので、ときどき人に尋ねられることがある。

「なにを撮るんですか?」

そういうとき、答えに窮していったん口ごもってしまう。そして、結局はいいかげんに答えてしまうことが多い。

いやー、なんかまあこう、街をふらふらと。用事の合間にですね、云々。云々。

でもほんとうは、なにを撮るかはものすごくはっきりしているのだ。ただ、「それ」には名前がなく、いつ訪れるかもわかっていないだけで。
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DATA:Leitz minolta CL M-Rokkor QF 40/2 Kodak Tri-X 400 f5.6 1/250
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# by solalyn | 2016-06-09 23:13 | PROPOS | Comments(0)

光画

 80年前のレンズを通したひかりを、期限切れのプレスト400に焼き付ける。

いやはや。
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DATA:Contax Ⅱ Sonnar 5c.m./1.5 Fuji Neopan 400 Presto f8 1/250
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# by solalyn | 2016-05-31 02:23 | PROPOS | Comments(0)

ガブル。ガブル。

 使い始めて数年が経過したぼくのコンタクトレンズは、ここのところ装着してもずっと調子が悪かった。

(あー、劣化していくんだな、すべては)

などとP.K.ディック的な感傷に浸っていたある日、ふと思いついて左右を逆にはめてみた。


ただ逆にはめていただけだった。

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DATA:Leitz minolta CL M-Rokkor QF 40/2 Kodak Tri-X 400 f8 1/1000
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# by solalyn | 2016-05-24 19:38 | PROPOS | Comments(0)

よすが

 そう遠くない未来の話、私がこの地上と分かれる日が来て、私の好きなシーンや形、たとえば暮れなずむ隅田川、青いウィーンの森、配偶者とのウィットに満ちた会話、首をのけぞらせて笑うガールフレンドの仕草など、こまごました地上の記憶と別れなくてはならなくなった時、私がカメラで記憶にとどめておきたいのは、ライカM型の両側がカーブした、あの丸みである。


― 田中長徳 『チョートクのカメラジャーナル No.3』 所収 「ライカ 今は仕事の道具 そして将来は地上の思い出?」 より ―
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DATA:Leitz minolta CL M-Rokkor QF 40/2 Kodak Tri-X 400 f2.8 1/30
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# by solalyn | 2016-05-07 01:20 | WORDS | Comments(0)

高貴な野良

 (略)若者が活力をもつためには、社会から馴致(じゅんち)されるな、ということである。古いことばでは、

「不羈(ふき。羈は手綱)」

という。手綱で制御されないという意味である。

ただし、この場合のむずかしさは、自分で自分の倫理を手製でつくらねばならないことである。しかも堅牢に、整然とである。でなければ、社会に負かされ、葬られる。

人間は大思想や社会によって馴致されて人間になるといいながら、じつは、古来、真に社会に活力を与え、前進させてきたのは、このような馴致されざるひとびとだった。


― 司馬遼太郎 『風塵抄 二』 所収 「飼いならし」 より ―
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DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f8 1/1000
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# by solalyn | 2016-04-16 17:13 | WORDS | Comments(0)

Fission or Fusion

イワタ君とトダさんをぶつけてみた。

うひょー。

たのしい四十代が待ってるなこりゃ。
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DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f8 1/1000
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# by solalyn | 2016-04-09 01:23 | PROPOS | Comments(0)

ピエールのこと

まず最初に断っておくが、ピエールは変態で、日本人だ。

でも、この言い方はフェアじゃない。ピエールから見たら、ぼくのほうがよほど変態に見えただろう、と思う。なにしろその土曜日は近所のバーの年に一度の「セーラー服ナイト(第二回)」の日で、ぼくは前日にアマゾンで購入した、ビニールレザーでできた、体にぴったりとフィットするセーラー服を着て脚には網タイツを穿き、黒いロングブーツに亜麻色のセミロングのウィッグまで着けていたのだから。四十過ぎた中年男が、である。

まあとにかくそんなところでぼくらは初めて出会った。ぼくのピエールへの第一印象は最悪だった。あたりかまわず写真を撮りまくり、大声で笑う。

(なんて野郎だ。俺はぜったいに口を利くまい)

ビニールレザー(パット入り)に包まれた胸のうちで、ぼくはカウンターで固くそう決意した。

だがそのあと、みんなでフレンドリーに行こうぜ!という感じの知人(みなさんの周りにもかならずいらっしゃるはずだ。もしもご自分がそうだとおっしゃる方がいらっしゃるのなら、ご無礼、ご無礼)に拉致され、テーブル席に移動した。はじめはお互い離れていたのだが、まあああいう席では並び順なんてどんどんシャッフルされていくもので、何かの拍子にぼくと彼はテーブルを挟んで向かい合う形になった。

彼が写真展(その近所のバーはギャラリーもやっているのだ)の作家さんに話しかけているのを、聞くとはなしに聞いていた。

作家さんのプリントを買った?へえ、結構ですな。


そのあとだった。彼は続けてロバート・メイプルソープのプリントも今日買ってきたのだ、と大声で言った後で、壁面を飾る作家さんの作品の一点をまっすぐ指さしながら、たしかこう言ったのだ。

「ぼくにとっては、メイプルソープも、○○さんのプリントも同じ価値です。どちらも本物で、うつくしい」

そのことばに驚いて彼の顔を見ると、今までとまったくちがう目をしていた。熱情で、輝いていた。


ああ、見つけた。本物の人間だ、こいつは。


そう思ったぼくはすぐに彼となかよくなり、ふざけ散らしながらたくさん酒を飲み、ぼくは彼を「ピエール」と名付け、彼はぼくを「ビルマ」と名付けた。ぼくが坊主頭だったからだ。

お互いのその安直さがうれしくて、ぼくらは意味もなくお互いの名前を連呼してはゲラゲラ笑った。夜が更けていった。
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DATA:Contax Ⅱ Sonnar 5c.m./1.5 Kodak Tri-X 400 f2.5 1/50
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# by solalyn | 2016-03-08 02:23 | PROPOS | Comments(2)

秋葉原からオリュンポスまで

先日、「しゃべる鳩」というものを初めて見た。というか、出会った。


その日、所用で秋葉原から岩本町へと歩いていると、橋の欄干から低いバリトンが聞こえてきた。見ると、二羽の白い、ほんとうに白い鳩が並んでいた。好奇心をそそられた私は、立ち止まって欄干にもたれ、誰かを待つふりをしながら聞き耳を立てた。

「ヘーラーよ、ゆうべのNHK特集を見たか。なげかわしい。かつてはわれらを信じていた者どもの末裔と称するものたちが、バビロンの街とひとびとをいかに残酷に取り扱ったことか。あれがカエサルの末裔だと。まったく手に負えん」

それに答える声は銀の鈴のような声だった。

「あなた、大神よ、あれらはもう、かつてわれらを敬ってくれた者たちとはまったくの別のものたちなのですよ。ちょうどアンフォラに注がれていたかぐわしいネクトルが、長い年月のうちに封をした松脂が溶け込んでしまって駄目になるように」

それを聞いてもバリトンは収まらない。

「あやつらも、あやつらの相手のかつてのフェニキアびとの言い分もまったく常軌を逸しておる。『我らの信ずる神とちがう神を信ずるものは悪魔だ』と。いやはや!」

そのあとしばらく沈黙があったあと、バリトンはクルックルッと鳴いた。

いや、それはどうやら私の聞き間違いだったようで、彼(?)は忍び笑いをこらえていたのだった。しまいには彼はとうとう大声で笑い出した。

「あっはっは。そ、それではアテナイはデルフォイと何の理由もなく戦をせねばなるまいて。なにしろデルフォイはアポローンを奉じておるからのう。アレクサンドロスとダレイオスは、お互いを悪魔と思うていつまでも戦わねばならぬのか。なんとしたことじゃ」

笑いながら息も絶え絶えに語っていた言葉は、だんだん低く、ちいさくなった。さいごにほとんど聞き取れないほどの声で「なんとしたことじゃ」と呟いた。


沈黙を破ったのは、銀の鈴だった。

「あなた、大神よ。それでも我らを信ずるものたちはまだ絶え果ててはおりませぬ。アルテーを持つ者、アルテーを愛する者どもが残っておりまする」


そこまで聞ければ充分だった。私は心の中で彼らに別れの挨拶を唱え、立ち去った。

「どうもありがとう。死すべき運命の人の子として感謝いたします。私たちに、もちろんあなたがた不死の神々にも、遍くゼウスのご加護がありますように」
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DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f5.6 1/250
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# by solalyn | 2016-02-18 03:50 | PROPOS | Comments(0)

奔流

先日、表参道での仕事帰りで駅に向かっていると、交差点近くの瀟洒なショーウィンドーの前に犬を連れてたたずんでいる男性を見かけた。

彼は見たところ五十代くらいで、映画『シザーハンズ』でジョニー・デップが着ていた(この言い方はほんとうは正確ではない。あの映画での彼の役はアンドロイドだかなんだかで、あれが洋服だったのか、それとも洋服を模しただけの機械的装備品なのかは言及されていなかったから)ような黒っぽい、質感がラバーのような不思議な上着を着ていた。髪型もどうやら最新流行のものらしくみえた。もしまだこの世界に「最新流行」なんてものが存続しているのならば、だが。

連れていた犬も洋犬だが、ピレネーでもドーベルマンでもマスチフでもボルゾイでもない、大型犬ということくらいしかわからない不思議な犬だった。

その未来人のような男と犬を見ていて、ふとこう訊ねたくなった。

「えーと、あなたは、ほんとうに、そんな暮らしを望んでいるのですか?この先には、なにを望んでいるのですか?あなたの行き先は、どこなんですか?」


そこまで考えて、自分もその質問には答えられないことに気が付いたので、黙ったままその場を去った。
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DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f5.6 1/250
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# by solalyn | 2016-02-16 02:47 | PROPOS | Comments(0)

Fields of gold

そうっと、そうっと。

邪魔にならないように。

写真を撮ったら、サヨウナラ。
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DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f8 1/1000
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# by solalyn | 2016-02-08 01:30 | PROPOS | Comments(0)