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テクテク パチパチ

 先日、十五年来の写真の盟友とふた月ぶりに(いつもの、あの懐かしい三十代の日々に、われらが根城だった)サイゼリヤで話をした。そのときの彼の言葉。

「たくちゃん、写真はね、眼の延長でも手の延長でもありませんよ。足の延長なんですよ。足がぼくのまわりの景色をスクロールさせていってくれるんですよ。そうやって流れていく景色を、ぼくはただ撮るだけでいいんですよ」
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DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f5.6 1/250
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by solalyn | 2017-02-27 01:53 | PROPOS | Comments(0)

ODUの坂道

 先程、はじめて小津安二郎監督の『東京物語』を(アマゾンプライムで)観た。笠智衆と東山千栄子演じる老夫婦が、歩き疲れて寛永寺の旧本坊表門の前で小休止した次のシーンは跨線橋。ゆっくりと坂道を下る二人は、途中欄干越しに東京の街を遠望する。その欄干の模様を見てはっとした。声が出た。

ああ、鶯谷の跨線橋だ。凌雲橋だ。

線路際までびっしりとビルが密生している現在では、もう欄干から東京のロングショットを見ることはできない。1953年の夏に、夕暮れ前の日盛りの中を笠さんたちがゆっくり下った坂道を、2017年の冬の朝の斜光線を浴びて自転車がゆっくり上ってゆく。

結論 原節子:ほんとうにうつくしい。杉村春子:異次元のうまさ。笠智衆:神様。小津:神様の神様。
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DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f8 1/1000
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by solalyn | 2017-02-14 00:46 | PROPOS | Comments(0)

どこにもないところ

 島尾敏雄の小説『死の棘』のもとになった言葉が記されているという、聖書の「コリント人への第一の手紙」について検索していたはずが、いつの間にか横道に逸れていた。その横道に落ちていた言葉。

「ユートピア」という単語は、ギリシア語の”Ou(無い)”と”Topos(場所)”を、あるろくでなしのイギリス人がかけ合わせたものだという。

あ、「ろくでなしの」というのは、単なる個人的な直感で、根拠はありません。ではでは。
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DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f2.8 1/30
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by solalyn | 2017-02-05 23:14 | PROPOS | Comments(0)

女学生は死なず

 父方の大叔母であるクニヨは、「薩摩生まれのお転婆女学生が、そのまま年をとった」という女である。ころころとした容貌に相応しく、陽気でよく笑い、にぎやかなことがだいすきだった。

数年ぶりに会った彼女は、骨と皮だけにやせ細っていて、病室に入ったときには本人かどうかわからないほどだった。

でも、ベッドに近寄って目を見るとすぐにわかった。ああ、そうだ。この目だ。いたずらっぽく、きらきらしている目。

その日、孫やひ孫に囲まれた彼女は

「まあ、こんなに若い男に囲まれてしあわせだこと」

と言った。そういいながらも、しばらくするときっぱりこう言ったのだ。

「あなたたちはこんなところにいてはだめ。外で遊んでらっしゃい」

その台詞は、ぼくもちいさい頃彼女からよくいわれたものだった。

帰り際にぼくは、「クニヨ、遺影を撮るからポーズして」とせがんだ。彼女はちょっと笑い、親指がするするとあがってきて


カチ 
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DATA:Leica M6 Summicron 50/2
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by solalyn | 2017-02-01 03:07 | PROPOS | Comments(0)