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Requiem

神主がなにごとかを発し、ぼくはいつものように両肩からカメラを下ろして頭を垂れた。

神前結婚式の撮影。いつものことだ。ただ、その日はひとつだけ、いつもとちがうことがあった。前日に学生時代からの二十年来の友人が自殺したことを知らされていたから。


書き置きに、ぼくの名前があったと聞いた。知らせてくれと。死んでいたら、知らせてくれと。

救えなかった。


神主の言葉は続いている。ぼくは普段通りに仕事をこなしつつ、ぼんやりと考え続ける。


あのときのあれは?

いや、そもそももっと前のこのときにはもう・・・?


神主の言葉が終わり、お祓いがはじまった。頭を垂れたままの一同の上をあのシャラシャラしたコヨリの親分みたいな棒が振られる。


風の音がした。

大きな樹々の下で、枝の間を風が渡り、たくさんの葉が鳴っているような音。


そうか、お祓いって、体に森の風を通すことなんだな。

そう思いつくと、今度は別の声が聞こえてくる。なじみ深い、どこか訥々とした、シニカルな、でも暖かい声が。


「またそうやってきれいに終わらせようとする。大橋はすぐそうやってなんでも美化しようとするでな」

ぼくだって負けていない。すぐに反論する。

「うるさいなあ。今回だけは言わせないよ。美化しようがどうしようが俺の好きにさせてもらうから。文句は俺がそっちに行ったら・・」


ぼくはいったん両眼を強く瞑りなおしてから、眼を開けてカメラを両肩に提げた。
c0226955_0152861.jpg

DATA Leica M6 Summicron 50/2 Kodak BW400CN f8 1/125
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by solalyn | 2012-05-09 01:17 | PROPOS | Comments(4)