カテゴリ:PROPOS( 232 )

写真展「ひととひかり」を開催します。

【2017個展 跋文】

「君は船に乗った。航海した。陸に着いた。上陸したまえ
- マルクス・アウレリウス-

五年前に親友が自殺した。昨年の暮れには妻が自殺未遂をし、今年の初めに大叔母が死んだ。

マルクス・アウレリウスが書いたように、人生が航海だとするならば、『死』に遭ってからが、ほんとうの船出な気がする。『死』が、『生』という船に食料を積み込む。そうすると帆は風を孕みはじめる。

この写真展は、『死』を主要なテーマにしています。死がシームレスに生と繋がっている感じをぼくの写真と文章で構成しています。観終わったあとに、生死の狭間に浮かんでは消えるよろこびや光を感じていただけたら幸いです。


大橋 拓(写真家)


大橋拓 写真展「ひととひかり」
c0226955_18374902.jpg

DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f41/125
にほんブログ村 写真ブログ モノクロ写真へ

[PR]
by solalyn | 2017-09-03 18:55 | PROPOS | Comments(0)

夢十夜

 こんな夢を見た。

夜。火事である。私の実家らしき家が燃えている。運び出されるひとびと。私はその中に父の姿を見つける。私が彼に近づくと、彼も私に気が付き、歩み寄ってくる。呆然とした表情で。そして私に告げる。デルフォイの巫女たちのように。

「拓、おかあさんが」

私はその一言ですべてを悟る。私はなおも呆然としている父の背中をさすりながら何事か慰めの言葉をかける。


私は実家の居間にいる。台所から出てきた母が私を見てほほ笑む。だが、私はもう知っている。ほんとうは何が起こったのかを。
c0226955_00591057.jpg

DATA:Leitz minolta CL M-Rokkor QF 40/2 Kodak Tri-X 400 f8 1/500
にほんブログ村 写真ブログ モノクロ写真へ

[PR]
by solalyn | 2017-06-07 01:17 | PROPOS | Comments(0)

うつってしまうものたち

 最近、「距離1.5~2メートルでのスナップショット」がマイブームである。

上がりを見て、いまだに驚きやよろこびを感じる。つくづくスナップショットはおもしろいなと思う。極々まれに、人生の謎が、ふっと、映り込む。
c0226955_01343648.jpg

DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f8 1/1000
にほんブログ村 写真ブログ モノクロ写真へ

[PR]
by solalyn | 2017-05-24 01:48 | PROPOS | Comments(0)

遠い太鼓

 父と母。

上がってきた写真を見ながら、あとどれくらいの間、こんな写真が撮れるんだろうかと考えた。
c0226955_01090917.jpg

DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f8 1/1000
にほんブログ村 写真ブログ モノクロ写真へ

[PR]
by solalyn | 2017-04-14 01:15 | PROPOS | Comments(0)

テクテク パチパチ

 先日、十五年来の写真の盟友とふた月ぶりに(いつもの、あの懐かしい三十代の日々に、われらが根城だった)サイゼリヤで話をした。そのときの彼の言葉。

「たくちゃん、写真はね、眼の延長でも手の延長でもありませんよ。足の延長なんですよ。足がぼくのまわりの景色をスクロールさせていってくれるんですよ。そうやって流れていく景色を、ぼくはただ撮るだけでいいんですよ」
c0226955_01403998.jpg

DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f5.6 1/250
にほんブログ村 写真ブログ モノクロ写真へ

[PR]
by solalyn | 2017-02-27 01:53 | PROPOS | Comments(0)

ODUの坂道

 先程、はじめて小津安二郎監督の『東京物語』を(アマゾンプライムで)観た。笠智衆と東山千栄子演じる老夫婦が、歩き疲れて寛永寺の旧本坊表門の前で小休止した次のシーンは跨線橋。ゆっくりと坂道を下る二人は、途中欄干越しに東京の街を遠望する。その欄干の模様を見てはっとした。声が出た。

ああ、鶯谷の跨線橋だ。凌雲橋だ。

線路際までびっしりとビルが密生している現在では、もう欄干から東京のロングショットを見ることはできない。1953年の夏に、夕暮れ前の日盛りの中を笠さんたちがゆっくり下った坂道を、2017年の冬の朝の斜光線を浴びて自転車がゆっくり上ってゆく。

結論 原節子:ほんとうにうつくしい。杉村春子:異次元のうまさ。笠智衆:神様。小津:神様の神様。
c0226955_23164038.jpg

DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f8 1/1000
にほんブログ村 写真ブログ モノクロ写真へ

[PR]
by solalyn | 2017-02-14 00:46 | PROPOS | Comments(0)

どこにもないところ

 島尾敏雄の小説『死の棘』のもとになった言葉が記されているという、聖書の「コリント人への第一の手紙」について検索していたはずが、いつの間にか横道に逸れていた。その横道に落ちていた言葉。

「ユートピア」という単語は、ギリシア語の”Ou(無い)”と”Topos(場所)”を、あるろくでなしのイギリス人がかけ合わせたものだという。

あ、「ろくでなしの」というのは、単なる個人的な直感で、根拠はありません。ではでは。
c0226955_22430880.jpg

DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f2.8 1/30
にほんブログ村 写真ブログ モノクロ写真へ

[PR]
by solalyn | 2017-02-05 23:14 | PROPOS | Comments(0)

女学生は死なず

 父方の大叔母であるクニヨは、「薩摩生まれのお転婆女学生が、そのまま年をとった」という女である。ころころとした容貌に相応しく、陽気でよく笑い、にぎやかなことがだいすきだった。

数年ぶりに会った彼女は、骨と皮だけにやせ細っていて、病室に入ったときには本人かどうかわからないほどだった。

でも、ベッドに近寄って目を見るとすぐにわかった。ああ、そうだ。この目だ。いたずらっぽく、きらきらしている目。

その日、孫やひ孫に囲まれた彼女は

「まあ、こんなに若い男に囲まれてしあわせだこと」

と言った。そういいながらも、しばらくするときっぱりこう言ったのだ。

「あなたたちはこんなところにいてはだめ。外で遊んでらっしゃい」

その台詞は、ぼくもちいさい頃彼女からよくいわれたものだった。

帰り際にぼくは、「クニヨ、遺影を撮るからポーズして」とせがんだ。彼女はちょっと笑い、親指がするするとあがってきて


カチ 
c0226955_03002200.jpg
DATA:Leica M6 Summicron 50/2Kentmere 400 f4 1/125
にほんブログ村 写真ブログ モノクロ写真へ

[PR]
by solalyn | 2017-02-01 03:07 | PROPOS | Comments(0)

Love to Thanatos

 先日、四年半ぶりに死神がやってきた。

今回はニヤニヤ笑うだけで帰っていった。ひらひらと手を振りながら遠ざかっていったその後ろ姿は、どこか自裁した友人に似ていたことに、数日後に気が付いた。
c0226955_12492593.jpg

DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak Tri-X 400 f8 1/1000
にほんブログ村 写真ブログ モノクロ写真へ

[PR]
by solalyn | 2017-01-16 13:36 | PROPOS | Comments(0)

最後の挨拶2016

 昨日、街ですれちがった自転車に乗った母子の会話。


母「どの道がいい?」

子「坂のない道がいい!」

母「どの道にも坂はあるの!」


今年もお付き合いいただき、ありがとうございました。みなさまもどうぞよいお年を。また生き延びて来年お会いしましょう。ではでは。
c0226955_17502613.jpg

DATA:Minolta CLE M-Rokkor 28/2.8 Kodak Tri-X 400 f5.6 AE
にほんブログ村 写真ブログ モノクロ写真へ

[PR]
by solalyn | 2016-12-31 18:02 | PROPOS | Comments(0)