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ご存知の方も多いかもしれないのだが、去年から縁あって写真教室を始めた。
教室と言っても生徒さんは一名。そもそも、 「古典的かつ実戦的なストリートスナップをモノクロフィルムでやりたい」 という、かなりニッチな要望だったので、「教えてます」というより、「二人で相談しながら運営してます」というほうが実情に近い。 教室を始めたころ、ぼくはスナップがあまり撮れなくなっていた時期だったんだけれども、教室が始まり、実習として街を歩くうちに、自然とまたぽちぽちと撮れるようになっていった。思えば恵まれた縁だったな、と思う。 「たくやんの写真には、気配が写ってる。脱ぎ捨てた洋服に、着ていたひとのぬくみが感じられるような」 「あたしが撮りたいものに、よりまっすぐ向かえるようにしてくれる」 「あたしがちゃんと撮れるようになったら、たくやんはすっと消えていくような気がする」 写真の神様、ありがとう。 実習の終わった後に、木村伊兵衛さんが住んでいた街の喫茶店で二人で話しているとき、ふとそう思った。 ぼくの神様は伊兵衛さんの姿をしていて、その伊兵衛さんによく似た神様はちょっと目をパチパチさせてから、 「オツなもんですよ」 そう言ってにやっと笑うとライカを抱えてふらりと行ってしまった。 ![]() DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak BW400CN f2.8 1/30
ひとにやさしくされると にげたくなる
ぼくはそんなことされるのにふさわしいにんげんじゃあありません って じゃあ どんなにんげんなのか かんがえてみる かんがえてみるがよくわからない にげたくなるくせに よろこばせるのがすきで にげたくなるくせに わらわせるのがすきで われながらこまったものだと おもったり おもわなかったり すぐににげたくなるぼくなのに ぼくのまわりのひとたちは ぼくのことをにこにこみてくれる すぐににげたくなるぼくなのに きづいたら まわりでたくさんのひとが にこにこにこにこしてくれていた よろこばされたり わらわされたりしていたのは ぼくのほうだった ひきうけよう、とおもった もうにげない たぶん ひょっとすると あるいは おそらく とにかく そんなことをかんがえた ![]() DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak BW400CN f8 1/125
皆々様
明けましておめでとうございます。旧年中はこのような地味ブログをご愛顧いただき、ありがとうございました。 本年も地味ーに、しつこく続けていく所存です。なにとぞよろしくお願いいたします。 ![]() DATA:iPhone4 HDR-Mode
「おまえはさ、弱いんだよ」
その日、マスターは大荒れだった。 ここはうちの近所のバーで、マスターと奥さんの二人でやっている。マスターの本業はデザイナーで、いろいろ苦労してきたひとらしい。まあ、苦労していないひとなんていないってことくらいは、いくらぼんやりのぼくでも最近はなんとなくわかってはいるつもりだけれども。もう38歳だし。まあ、そうは言っても、いざ酔っぱらったマスターの矛先が自分に向いてきて、(こりゃなんか不穏だなあ。いつ帰ろうかなあ)とか思っていた矢先にそう言われて、ぼくはちょっとムッとした。 「そんなことないですよ」 そういうことばが喉元まで出かかったけれど、なにも言えない。ぼくはあいまいなにやにや笑いを浮かべながら、 「まあねえ。弱いと言われれば、その通りですけど」 とかなんとか答えてしまう。ずるいな、ずるくなったな、などと考えながらレモンサワーを飲む。このひとのほうがずっと正直だ。ずっとずっと正直だ。 一週間後に顔を出すと、マスターは店の隅っこでタブレットのお気に入りのゲームをやっていた。人食いザメのゲームだ。顔をあげてぼくだと気づくとなんともいえない表情をした。ぼくはすかさずとっておきの元気な声で、 「まいど。レモンサワーください」 と言った。 ![]() DATA:Leitz minolta CL M-Rokkor QF 40/2 Kodak BW400CN f2 1/15
ぼくがいつも連れ歩いている彼女を見たとき、人の反応はさまざまだ。
断片的なイメージで語る人。それはもう、好悪を問わない。 うつくしい。古典的。古臭い。ブランドの匂いがプンプンする。 熱狂的なファンであることを隠さない人。隠す人。 「長く付き合うのには最高だよね」 とか 「じっくり撮るには最高だよね」 とかね。 ・・・撮る? 帰宅して彼女に話しかける。 「ねえ、ぼくは君は『じっくり撮る』っていうよりは、『世界でいちばん人間に近くて、いちばん速く撮れる』って気がずっとしてるんだ。でも、そういうひとはあんまりいないよ。どうしてなのかなあ」 「そうねえ・・・あなたが言うようにわたしは本来はそういうものだったわ。でもね、今はファッションの時代なのよ。わたしはスノッブな現代人の、小粋な小道具に変わった。いいえ、変えられちゃったの。わたしの言っている意味、わかるかしら?」 「正直なところ、よくわからないんだ」 「おバカさん。でもね、あなたのそういうところ、とてもすきよ」 彼女の名前は、ライカっていう。 ![]() DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak BW400CN f2 1/30
早いもので、上京してからもう二年が過ぎた。
そう書くとなんだかおおげさだけれど、息子に会いに行くためにちょくちょく実家に帰っているのであまり感慨はない。(ああ、もう二年か)くらいのものだ。 でもそうやって実家を離れて気づいたこともある。たとえば父が毎朝仏壇に線香をあげて手を合わせていること。 深夜バスが早朝に着くからということもあるのかもしれないが、実家住まいの頃は気づかなかった。父はとくに信心深いほうではない。どちらかといったら不信心者に近いたちの人間だ。モダンジャズがすきだし。いや、それは関係ないか。 とにかく、そんな父がぼくが帰るたんびに合掌している。これはもう、毎朝の日課だと思って差支えないだろう。(いつからなんだろう)そう考えていたら思いだした。 ぼくの祖母、つまり父の母が亡くなってからのような。 ぼくもいつかは、ああやって毎朝手を合わせるようになるんだろうか。そのときはなにをおもって手を合わせるんだろう。自分の順番が来るまで、その答えはたのしみにとっておくことにする。 ![]() DATA:Leica M6 Summicron 50/2 Kodak BW400CN f5.6 1/125
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